微男微女

日常の考察

【読書記録】シャドウ/道尾秀介

道尾秀介さんの「シャドウ」を読みました。この作者の方の作品は何作か読んでいてどれも面白く、今回も期待通りの面白さでした。

 

以下、本に書いてあるあらすじを引用します。

人は、死んだらどうなるの?——いなくなるのよ——いなくなって、どうなるの?——いなくなって、それだけなの——。その会話から三年後、凰介の母はこの世を去った。父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが……。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは? いま最も注目される俊英が放つ、巧緻に描かれた傑作。第七回本格ミステリ大賞受賞作。

 

【感想】

最後に明らかになる事件の背景、真相が予想外で本当に驚きました。作者の誘導にうまくのせられ、「この人はこっそり悪さをしたに違いない」「この人は絶対にいい人だ」などと思い込んでしまっていましたが、それが覆された形です。どんでん返しですね。自分の思い込みのおかげで作品を楽しめたので、個人的には騙されないようにしようと考えながら読むよりは、素直に読み進めていくことをおすすめしたいです。あまり明るい話ではありませんが、すっきりする終わり方で、本を閉じた後、前向きな気持ちになれました。

 

シャドウ (創元推理文庫) [ 道尾秀介 ]

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ではまた!

きゅうり(矢野友理)

『左手ノート』を書き始めて2年が経ちました

利き手と逆の手=左手で毎日最低1ページはノートを書く、と決めて実践し始めたのがちょうど2年前の今日。

2年間毎日『左手ノート』を書き続け、1077ページにもなりました。ノートは22冊目です。

 

写真を見てください。

これ↓が1ページ目(2年前)です。


そしてこれ↓が今日の写真。

 

2年間継続した結果、利き手とほとんど変わらない字を書けるようになりました。もちろん、書きやすさや書くスピード等、厳密にはまだまだ右手と左手で違いはあります。でも、そういった違いも書き続けることで徐々になくなっていくような気がしています。これからも朝のルーティンとして継続していきたいと思います。

 

1年前に書いたブログ↓もぜひ。

kyuuchan1.com

 

ではまた!

きゅうり(矢野友理)

【読書記録】超短編! 大どんでん返し/小学館文庫編集部 編

「超短編! 大どんでん返し」を読みました。いろんな作家さんの2000字の小説が30編おさめられている本です。

 

「これぞどんでん返し!」というものもあれば、「これは一般的などんでん返しとはちょっと違うけど確かにどんでん返しではあるかな」というものもあれば、「どこがどんでん返しなのかわからない」というものもありました。

 

この本の中に好きなどんでん返しはたくさんありますが、強いてひとつに絞るとすれば、大山誠一郎さんの「硬く冷たく」がお気に入りです。

超短編なのでどんなお話か書いてしまうとネタバレになってしまい、あらすじをうまく紹介できないのですが、きれいなどんでん返しで、読み終わった時「えっ」と声が出て、思わず最初から読み返してしまいました。

そんな面白いお話がたくさん詰まっていて、かつ、ひとつひとつが短いので、忙しい人でも気軽に楽しめる本だと思います。

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ではまた!

きゅうり(矢野友理)

【読書記録】理由あって冬に出る/似鳥鶏

似鳥鶏さんの「理由あって冬に出る」を読みました。「理由」の読み方は「わけ」です。

あらすじは以下本の後ろに書かれたものを引用します。

芸術棟に、フルートを吹く幽霊が出るらしい——吹奏楽部は来る送別演奏会のため練習を行わなければならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。幽霊を否定する必要に迫られた部長に協力を求められ、葉山君は芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 新鋭が放つコミカルな快作。

 

この作者の方の作品は三作目で、過去に「推理大戦」と「叙述トリック短編集」を読んでいるのですが、かなり特徴的な文章を書かれる方で、作者名を伏せて読んでもわかるくらいです。第十六回鮎川哲也賞に佳作入選したデビュー作で、読んでみて、この方は最初からこの特徴的な書き方なんだなあと思いました。

 

幽霊が出るということで、怖かったらどうしようと少し不安もありましたが、全然そんなことはなく、あらすじにもあるとおり本当にコミカルでした。

 

幽霊のトリック自体は大掛かりなものではなく、意外性もなかったのですが、最初から最後まで、とにかく高校生たちの会話がユーモアに富んで面白いのと、真相が意外でラストに驚きがあってすごく良かったです。

 

青春ミステリーが好きな方はぜひ読んでみてください。

 

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ではまた!

きゅうり(矢野友理)

【読書記録】方舟/夕木春央

夕木春央さんの「方舟」を読みました。

Twitterで話題になっていてずっと気になっていた本です。今日買い、今日読了。ページをめくる手が止まらず、あっという間でした。

 

以下、帯に書かれているあらすじを紹介します。

友人と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。

翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。

そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。

タイムリミットまでおよそ1週間。

生贄には、その犯人がなるべきだ。

——犯人以外の全員が、そう思った。

 

 

どうやら衝撃のラストが待っているらしい。

でもネタバレになるから感想が言えないような内容らしい。

 

Twitterを見てそんなことを思いながら読み始め、実際、その通りでした。

 

さらに、「推理」や「驚きの真相」というミステリーとしての面白さだけでなく、極限の状況で人間は何を考え、どう振る舞うのかを、主人公の柊一と一緒に追っていく面白さもあり、非常に読み応えがありました。

 

読み終わってからも「自分が同じ状況に置かれたらどうするだろう」とか「主人公はどうするのが正解だったんだろう」とか、挙げ句の果てには「犯人は酷いことをしたけど、もしかしたら(何を一番の目的にするかによっては)一つの正解だったんじゃないだろうか」とすら思えてきて、とにかく思考がぐるぐるして止まりません。

 

ミステリー好きな人にはもちろん、そうではない人にもおすすめの小説です。

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きゅうり(矢野友理)

【読書記録】探偵が早すぎる/井上真偽

井上真偽さんの「探偵が早すぎる」を読みました。上下巻あります。

 

父親から莫大な遺産を相続した女子高生が親族から命を狙われるのですが、犯罪が実行される前に探偵がトリックを見抜いていくという斬新な設定で、非常にテンポよく物語が展開されていきます。

 

はっきりと、最初から最後まで「勧善懲悪」の世界観です。

そのため、トリックについては読まなければわからないものの、どういう展開になるかはある程度予想できてしまいます。

しかし、だからといって物語の魅力がなくなるわけではなく、むしろ嫌な人たちが探偵に次々とやられていく様は読んでいて爽快でした。

 

また、ミステリーにしては珍しく、人が死なないので(探偵が事前に見抜いてくれるから!)暗い気持ちにならずに済みます。

スカッとしたい人におすすめです。

 

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ) [ 井上 真偽 ]


感想(5件)

 

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きゅうり(矢野友理)

【読書記録】火車/宮部みゆき

宮部みゆきさんの「火車」を読みました。

 

本の裏側に載っているあらすじを引用します。

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して——なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。

 

ところどころ時代を感じるなぁと思ったら、私が生まれた年に刊行された作品でした。

 

刑事が行方不明になった女性と繋がりのあった人を訪れるにつれて、だんだんと女性の人生が浮かび上がってきます。恐ろしいです。ネタバレになってしまうのであまり詳しく書けませんが、借金の恐ろしさがこれでもかというほど伝わってきました。お金がここまで人生を狂わせてしまうのか、救いはなかったのか、と思わずにはいられませんでした。

 

ちなみに、ラストはかなり消化不良でした。

これからなのに!

この続きこそが知りたくて読んでいたのに!

というシーンで終わるからです。

作者さんは意図的にこういう結末にしたと思うので、自分なりに受けとめ、これから頑張って消化していこうと思います。

 

火車 (新潮文庫 新潮文庫) [ 宮部 みゆき ]

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きゅうり(矢野友理)

【読書記録】記憶の果て/浦賀和宏

浦賀和宏さんの「記憶の果て」を読みました。上下巻あり、少し長めです。

 

主人公は大学進学を間近に控えた安藤直樹。彼の父親が自殺するところから物語は始まります。父親の書斎にあったパソコンに「安藤裕子」と名乗る人工知能があらわれ、会話をするうちに直樹は裕子を好きになっていくのですが、「裕子」は実在していたことがわかり……

いったい「裕子」は何なのか……直樹は関係者を訪ね回り、真実を探っていきます。

ざっくり、そんなお話でした。

 

本には直樹の心の声が直接書かれていて、それもかなり量が多いです。必ずしも共感できる心情ばかりではないですが、一人の人間の内面を丁寧に追っていく過程は楽しめました。謎が気になるので、長くても最後まで飽きないです。

 

また、登場人物が「裕子」に意識はあるのかという哲学的な問いに向き合うところや、物語が進むにつれて「裕子」の正体が変わっていくところが面白かったですし、結末にはかなり驚かされました。

 

唯一気になるのは、父親の自殺の原因など、いくつかの謎が最後まで明かされないまま終わってしまったところで、真相を知りたかったなと思いました。

 

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きゅうり(矢野友理)

【読書記録】連弾/佐藤青南

佐藤青南さんの「連弾」を読みました。

 

あるクラシックコンサートを聞いた男の死体が都内の公園で発見され、二人の警察が捜査をします。その関係者を訪れる過程で、徐々に真相が明らかになっていき……というお話で、最後には狂気に満ちた人間の本性が暴かれて恐ろしかったです。ただ、事件には狂気を感じましたが、音楽隊志望の刑事・鳴海桜子がなかなかに個性的なキャラクターで、最後まで楽しく読めました。

 

帯に「事件の鍵はベートーベン」とあって、音楽の知識がない私でも楽しめるだろうかという不安もあったのですが、全然大丈夫でした。

 

奇抜なトリックや盛大などんでん返しで驚かせるタイプのミステリではなく、登場人物の人生を丁寧に描いていて、ドラマを観ているような感覚になりました。頭にスッと入ってくる文章で、作品に入り込みやすかったです。

 

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きゅうり(矢野友理)

【読書記録】屋上のテロリスト/知念実希人

知念実希人さんの「屋上のテロリスト」を読みました。

 

この作者の方の本を読むのはこれが初めてです。お名前は以前から知っていて、ミステリーを主に書かれている認識だったのですが、この小説は私の中ではミステリーというよりサスペンスでした。

 

第二次世界大戦後に日本がポツダム宣言を受けいれず、かつてのドイツのように「壁」で東西に分断されてしまった、という設定の物語で、女子高生が壮大なテロを計画、実行します。

 

「一人の犠牲者も出さないで、世界を変えることなんてできると思う?」

女子高生テロリストはこう言いました。この台詞に込められた意味がわかった時、感動せずにはいられませんでした。

 

いったい何が仕組まれていて、どう決着がつくのか、最後までハラハラします。

 

ストーリーもよかったですが、個人的には女子高生と自殺志願者の会話や、政治家たちの会話が特に面白かったです。

 

重いテーマを扱いつつも、ライトノベルっぽい感じで、全体的にさらっとしていました。

 

屋上のテロリスト [ 知念実希人 ]

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きゅうり(矢野友理)